ランタスXRが適している患者像

ランタスXRが適している患者像

ランタスXR

ランタスXR

インスリングラルギンの300単位/mL製剤がランタスXRとして発売された。グラルギンU300と言われていたものだ。従来のランタスの3倍の濃度は当初、1回の注射液量が多い患者に対応するためのものだったが、検討の過程でランタスよりも作用持続時間が長いことが分かり、新しい持効型インスリン製剤として売り出された。このような特徴をどのような患者さんに、何を期待して使用すればいいのか論じたい。

グラルギンU100

従来型のグラルギン(=グラルギンU100)は、作用時間が20~24時間前後で、半数以上の患者では24時間以上の作用持続は期待できず、1日1回皮下注の場合、皮下注後5-6時間前後に弱い血中濃度のピークがあることが知られている。その一方で、作用持続時間が1日弱であるため、血糖値を見ながら日毎に用量を調節することが可能で、例えば術前の早急な血糖コントロールを行いたいような場合には比較的使用しやすいという利点がある。

しかしながら、広く行われているような、朝前の血糖値を見ながら朝前に注射する量を調節するというシンプルな血糖調整法(例えば3-3-1法;3日続けて3桁の血糖値が持続すれば持効型インスリンを1単位増量)には適さない。

その一方で、ノボノルディスクのインスリンデグルデグの作用時間は30時間前後で24時間は確実に効果は持続するが、最初の皮下注から完全に血中濃度が安定化した定常状態に達するまでに3,4日以上を要する。また皮下注から10時間前後に弱い血中濃度のピークがあることが知られている。このため、グラルギンU100に比べて早急な血糖コントロールには適さない反面、上記のシンプルな血糖調整法にはより適した製剤と言える。

インスリンデグルデク

このように全体として「グラルギンU100は帯に短く、インスリンデグルデグは襷に長し」の印象がある。一方、グラルギンU300は作用持続時間は24-28時間とほぼ確実に24時間以上効果が持続し、そのPK/PDプロファイルを見る限り意外にもほとんどピークらしいものが見当らない。この特性を反映したものとして、あるスタディではグラルギンU100から同単位での切り替えではCGM上、夜間、各食前血糖値が明らかに安定化し、単独投与では約3日前後で定常状態に達するという報告であった。このことよりグラルギンU300はインスリンデグルデグより短期的な血糖コントロールには適していて、上記のシンプルな血糖調整法にも適するグラルギンU100とインスリンデグルデグの中間をいくとともに、夜間・食前血糖安定性により優れた持効型製剤になりうると考えられる。

したがって、外来で投与しているインスリンデグルデグをわざわざグラルギンU300に変更するメリットは現時点では明らかではないが、グラルギンU100で朝食前血糖値がうまく調整できない場合や、夜間低血糖が懸念される場合には、とりあえず同単位でグラルギンU300へ変更して、切り替えによって食前血糖値の安定化が確認されれば、より厳格な用量調節への移行が可能になるだろう。

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